えとう乱星ならば、こう書いたかもしれない。
死んだと思ったでしょ。びっくりした?
今も口述筆記を続ける声が、息子である僕の耳に
残っている。立派な父だったかと問われると、
実に立派だったような、そうでもないような後味を
残して別れの言葉も告げずに旅立った。
自らをエトランゼ(異邦人)と号していた小説家で
ある。
ウィキペディアには『筆名は「ときめきトゥナイト」
の主人公から」と書かれているが、本人は「伝奇作家
として生きるにあたって、江戸川乱歩の奇想と
室生犀星の精神にあやかりたい」気持ちがあったと
話していた。
ただ、人が喜ぶならば何とでも言う男である。
何かの拍子にときめきトゥナイトからと調子よく言った
可能性は大いにある。この調子のよさに家族は
振り回された。新しいiPhoneが発売されれば
欲しがり、TVで食リポを見ればそれを食べたがり、
乃木坂46にうつつをぬかしては僕に写真集をねだった。
四肢が不自由でなければ二十歳を前に命を燃やし
尽くしていたと本人も生前に言っていたが、その通り
だろう。
呆れるほど奔放に生きた父であったが、多くの人が
えとう乱星の死を話題にし偲んでくださる様子を知ると
にかっと笑いながら「どうだ、うらやましいか」と言う
父の姿が浮かぶ。
「ええ、うらやましいですとも」
「じゃあさ、ブログ書いておいて。みんなに挨拶するの
忘れてたから」
いたらぬ無料ソフトをインストールしてはパソコンが
使いにくくなったので直せと僕を呼びつけていた父。
俺は専属の修理業者ではないと怒る息子に対して
「えへへ」と舌を出しておどけていた父。
本当に、これが最後ですよ。
もう面倒はみませんからね。
さて皆様。憂き世を浮かれて生きてまいりましたが、
あえなく沈むこととなりました。
お先に失礼。 …了
えとう乱星
死んだと思ったでしょ。びっくりした?
今も口述筆記を続ける声が、息子である僕の耳に
残っている。立派な父だったかと問われると、
実に立派だったような、そうでもないような後味を
残して別れの言葉も告げずに旅立った。
自らをエトランゼ(異邦人)と号していた小説家で
ある。
ウィキペディアには『筆名は「ときめきトゥナイト」
の主人公から」と書かれているが、本人は「伝奇作家
として生きるにあたって、江戸川乱歩の奇想と
室生犀星の精神にあやかりたい」気持ちがあったと
話していた。
ただ、人が喜ぶならば何とでも言う男である。
何かの拍子にときめきトゥナイトからと調子よく言った
可能性は大いにある。この調子のよさに家族は
振り回された。新しいiPhoneが発売されれば
欲しがり、TVで食リポを見ればそれを食べたがり、
乃木坂46にうつつをぬかしては僕に写真集をねだった。
四肢が不自由でなければ二十歳を前に命を燃やし
尽くしていたと本人も生前に言っていたが、その通り
だろう。
呆れるほど奔放に生きた父であったが、多くの人が
えとう乱星の死を話題にし偲んでくださる様子を知ると
にかっと笑いながら「どうだ、うらやましいか」と言う
父の姿が浮かぶ。
「ええ、うらやましいですとも」
「じゃあさ、ブログ書いておいて。みんなに挨拶するの
忘れてたから」
いたらぬ無料ソフトをインストールしてはパソコンが
使いにくくなったので直せと僕を呼びつけていた父。
俺は専属の修理業者ではないと怒る息子に対して
「えへへ」と舌を出しておどけていた父。
本当に、これが最後ですよ。
もう面倒はみませんからね。
さて皆様。憂き世を浮かれて生きてまいりましたが、
あえなく沈むこととなりました。
お先に失礼。 …了
えとう乱星
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